本紹介:「脳を鍛えるには運動しかない!最新科学でわかった脳細胞の増やし方」
今日は、本の紹介(というか、勉強になったことの備忘録)です。
脳を鍛えるには運動しかない!最新科学でわかった脳細胞の増やし方
著:ジョンJ.レイティ with エリック・ヘイガーマン
訳:野中香方子
なんてこった、読むの遅かった。
それが一番の感想です。
運動※の脳に対する効果が科学的事実と臨床事例から解説されている、というお堅い本ですが、めちゃくちゃ読みやすいです。
※運動は主に有酸素運動が取り上げらています。
理由は、科学的に証明する上で行われる研究では運動後に脳の生体組織検査を行うことが望ましいため、「ラットが対象」になるわけで、「ラットに実施可能な運動」である必要があるため、とされています。
本書で取り上げられた、運動の脳に対する効果を以下に列挙します。『』内は本書より引用。
・学習能力向上:海馬のBDNF増加、ニューロン新生(学習する課題と環境は必須)
『学習と記憶の能力は、祖先たちが食料を見つけるときに頼った運動機能とともに進化した』
・ストレス耐性:ニューロンのストレス後の回復、筋緊張緩和のフィードバック
・うつの改善、気分の明朗化
不安、悲観の減退:セロトニン、ノルアドレナリン、エンドルフィン
意欲向上、〇〇依存の改善:ドーパミン
・注意力向上:運動制御システムの稼働(複雑な運動である方がいい)
・認知症予防:海馬だけでなく前頭葉、側頭葉など皮質の容積も増大
・妊婦にとっても赤ちゃんにとっても運動するほうが良い。
必要な運動については、ウォーキング(低強度、55-65%MHR)、ジョギング(中強度、65-75%MHR)、ランニング(高強度75-90%MHR)、全力疾走(無酸素運動)に大別すれば、毎日歩くかゆっくり走るかし、週2,3回は走り、ときどきは全力疾走することが勧められています。
『生物学者ベルント・ハインリヒは、(中略)人類を「持久力のある哺食者」と評している。(中略)ハインリヒによれば、アンテロープは哺乳類のなかでも最も足の速い種のひとつだが、わたしたちの祖先はそれを狩ることができたそうだ。どうやって?逃げる力がなくなるまであとを追いつづけたのだ。(中略)わたしたちの筋肉繊維は収縮の速いものと遅いものがバランスよく組みあわされているので、延々と野山を超えたあとでも、一気に走って獲物を仕留めることができるのだ。』
『毎日運動できればベストだが、休み休みでも運動すれば驚異的な効果がある(中略)。もし数日間、あるいは1,2週間、運動しそびれたとしても、再開した翌日には、海馬BDNFをどんどん生産している。』
筋力トレーニングまたは、ヨガや太極拳については研究が少ないし、研究方法も限られている(ラットはそれらをできないし、ヒトでは脳の生体組織検査ができない)。
筋力トレーニングについては、不安感は弱まり、気分はよくなり、自信もついていたが、思考能力は効果を得られなかった。
ヨガの呼吸法はストレスと不安を軽減し、太極拳が交感神経系の活動を鎮めることがわかっている。
これからもしばらくは、脳と運動(できれば体操)についての勉強がマイブームになりそうです。
運動における脳、つまり運動制御システムに関しては研修会を行っています。
8月6日(大阪)
「運動制御システムから考える動作障害の運動療法の基礎と、効率的な姿勢・動き方の探究」
9月10日(広島)
「関節可動域制限と徒手技術の基礎」
170910第3回桝井貴史先生勉強会 of 知鑽治笑Project
私の治療観は拙著をご参照ください。
治療技術としての理学療法入門 -治療対象の基礎と臨床- / DLmarket
(各セクションにおいて症例検討を交えています。)