理学療法と身体操作の気づきと雑感

理学療法と身体操作について気づいたことや、ふと思ったこと、なんか言いたくなったことなどを書き留めてゆきます。個人的見解が多いので、ご了承ください。

膝の抜きとボールの転がりに働く「力」の正体

効率的な力の流れは、下部体幹の前額面と、骨盤・支持面の水平面で∞を描く。

 

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骨盤・支持面の水平面の∞において、踵から土踏まずに流れるときに、

下部体幹の前額面の∞において、同側の内側弧を下降する流れと同時に、

対側の外側弧を上昇する流れが生じる。

例えるなら、ボールの転がりである。

これらにより、膝の抜きと、対側の遊脚が促される。

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今回は、この力の流れの正体、すなわち筋活動や重力、床反力についての気づきと、

感覚において意識するポイントについての気づきを述べる。

 

 
下部体幹前額面の∞の内側弧を下降する流れの正体は、重心の従重力方向への下降であり、このとき、鉛直方向に突き上げる床反力に対して、骨盤帯の安定を得るべく内腹斜筋横行下部線維の活動が高まる。

この状態で、殿筋と大腿四頭筋のスムースに遠心性に働けば膝は抜ける。 

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しかし、内腹斜筋横行下部線維の働きが不十分であったり、

殿筋や大腿四頭筋の遠心性制御がぎこちない場合には、膝を抜くことができず、

下肢筋の大きな求心性活動によって立脚した後に、下腿三頭筋、足趾筋による蹴りとそれに対する床反力で推力を得る。

蹴る場合には、足関節底屈運動が生じる。

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これに対して、膝の抜きは重心の下降、すなわち体重に対する床反力で推力を得ることができる上、足関節の底屈運動も不要であり、繰り返す遊脚の回転効率も良い。

つまり、下肢筋力も小さく、運動手順も少なく、回転効率も良い。


膝の抜きが、内腹斜筋横行下部線維の活動と、

殿筋と大腿四頭筋のスムースな遠心性制御によって成されるときは、

同側の骨盤が前に出る。すなわち対側へ回旋する。

これは、骨盤と股関節の靭帯により対側股関節の外旋を促す(筋活動は不要)。

股関節外旋により支持から解放された下肢は、吊るしさえすれば遊脚が可能になる。

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下肢を吊るすだけでいいので、股関節屈筋である腸腰筋が活動すればよい。

とくに大腰筋の活動は重要である。

大腰筋の活動は、支持側の活動が高まった腹斜筋群による体幹側屈作用に拮抗する働きも担うためである。

下肢を遊脚させる大腰筋の活動の高まりが、下部体幹前額面の∞の外側弧を上昇する力の流れである。

 

大腰筋の働きが不十分な場合は、支持側に体幹が側腹部を中心に側屈する。

 
また、下肢を前に出そうと意識しすぎると、大腿直筋をはじめ大腿四頭筋が活動し、膝の伸展と骨盤の後傾が生じる。

 

 
太極拳は、定められた型をゆるやかに動くことで、重心の動きや床反力、靭帯や筋膜による自然な体節の動きを感じることができ、

少ない筋力によるスムースな遠心性制御や大腰筋による下肢の遊脚などを学ぶことができる。

私も、太極拳から多くのことを学び、日々気づきを得ている。

重心の動きや床反力、靭帯や筋膜による自然な体節の動きといった、筋力ではない力を感じれば感じるほど、動きはゆっくりになっていく。


こういった知識を用いた歩きやすいコンディション作りのための研修会を段階ごとに企画している。

まず、基本的なスキルとして、正しい関節の動かし方、筋の触れ方を学ぶ研修会。


やってみると驚くだろうが、ROM運動を正しくできるとは、とても難しい。

ぜひ、学びに来てほしい。


次に、ROMとアライメントを治療し、脳に身体の解剖学的情報を認知させ(身体図式の構築)、
パターンで動けるように(パターンを促通)することで、
歩行の下肢のステップがオートマチックで出るところまで学ぶ。

 

www.pt-ot-st.net

最後に、体幹機能と武術的身体操作から姿勢制御の促通法を学ぶ。

これは、産業理学療法における作業姿勢の指導にもつながり、

すなわち職業性腰痛をはじめ運動器疾患の予防や、高齢勤労者の運動機能改善にも役立つ。

最後の研修会は、大枠は企画できているが、自分自身の身体操作も納得できるところまで研鑽してから開催したい。


私の治療観はコチラをご参照ください。

health.dlmarket.jp
動作能力の基盤たるimpairmentの医学的地位を確立し、

そして、その評価・治療の技術こそが、理学療法士ができて当たり前の技術であるという観点から、理学療法士の専門性を明確にしていきましょう!