姿勢・運動制御の∞を促通する体操
誕生日の今日、すごい気付きを得た。
気付きの内容について話す前に、まず、既存の知見について整理しておく。
歩行時の脊椎、胸郭、肩甲帯、骨盤帯の動きは複雑なようで、魚類のころからベースは変わっていない。
ヒトは二足歩行になって身体の向きが地面に垂直になったため、
魚類のころからのベースの動き(前額面)に、進行方向(水平面)の動きを加えただけだ。
それらの動きを、武術などでは、∞マークを描く、動きとか、力の流れ、あるいは「軸」と言ったりしている。
僕は、その∞の動きは、体幹の前額面と、骨盤・支持面の水平面に描くものと考えている。
そして、その動きこそ、姿勢・運動制御の核だと考えている。
僕は、基本的な歩行では、骨盤・支持面の水平面の∞が、少し内側に向いていると考えている。
だからこそ、セラピストが患者の正面から、歩行の姿勢・運動制御を誘導する場合は、
自身の姿勢・運動制御における骨盤・支持面の水平面の∞を、反転させて、外向きにする必要がある。
ちなみに、この外向きの∞の姿勢・運動制御は、階段の昇りや、膝行に通じる動きになる。
階段の下りの姿勢・運動制御は、歩行と同じく内向きの∞である。
ここからが本題。
この内向き∞や、外向き∞の姿勢・運動制御を、促通しやすいセルフエクササイズを、今朝見つけたというものである。
実際の体操はこのようなものだ。
まず、棒を使う。
できれば、棒と団扇を使うと良い。
棒を順手で団扇とともに持ち、棒で∞を描きながら、団扇で風を前に押し出すように、
股関節、腰を入れて、肩甲骨をしっかり前に出す。
∞を描くと言っても、肩が上がったり下がったりしないように注意する。
もう一つは、棒を逆手で団扇とともに持ち、棒で∞を描きながら、団扇で風を後ろに持ってくるように、
股関節、腰から、肩甲骨をしっかり内に退く。
これも、肩が上がったり下がったりしないように注意する必要がある。
この、順手で持つ方の運動が、骨盤・支持面の水平面の∞が内向きの姿勢・運動制御、
逆手で持つ方の運動が、骨盤・支持面の水平面の∞が外向きの姿勢・運動制御になる。
正しい軸を持てていない人でも、この運動を行えば即席で整える(軸を作る)ことができる。
健常者なら、外向きの∞姿勢・運動制御促通練習で、階段の昇りは、びっくりするほど軽くなることを実感できるはずだ。
ちなみに、ぼくがこの運動に気づいたきっかけは、毎朝行う鞭杆の、準備体操のときだ。
日々、繰り返し行うことでも、ただ、繰り返すのではなく、繰り返す中で真理を追究していくならば、必ず気づきは得られる。
そんなことにも気づけた、誕生日でした。
動作「自立」について、PTとOTの認識の違い
たぶん、PTが悪い。
もしかしたら、僕だけかも。
動作の自立度について、
介助がいらなくなったら、「自立」と。
問題になるのは、ときに、特定の、動きの手順や、運動パターンでないと、「自立」できない場合であって、その動き方が、自然に出てこない場合。
例えば、声掛け、あるいは、一回失敗して「あっ、そうだ」と意識しなおして動く場合とかも。
こういうのをどう言うか。
少なくとも、僕は「自立」と言ってしまっていた。
「できるよ」と。
でも、OTさんとか、ちゃんと日常生活レベルのことを考える人は、「自立ではない」と。
確かに、そりゃそうだ。
いわゆる、「できるADL」と「しているADL」とも言える。
問題の本質は、「Fittsの運動学習段階」。
つまり、認知段階や連合段階では、潜在的に優位な運動パターンが目標の動き方でないため、日常生活の中や、環境の変化によって、目標とする動き方ができず、結果「できない」ときがある、ということ。
さて、どうするか。
はい。
表現を整理し、統一しました。
介助がいらなくなっても、声掛けがいる、運動学習の認知段階は、可能ー認知レベル。
介助がいらなくなっても、運動学習の連合段階なら、可能ー連合レベルで、遠位監視。
介助がいらなくて、運動学習の自律段階になったら、自立と。
うちでは、そのように統一いたしました。
はぁ、スッキリ!
ポストリハビリテーションで、コンディショニング以外に大事なこと
リハビリテーションの投稿会で、
「リハビリテーション(社会参加、自立)のための便利グッズ、役立ちツール」として、
押し車をこう紹介しました。
例えば、杖なら500mくらいの耐久性で、雨なら外出しにくいくらいの安定性なら、
押し車にすれば、疲れたら途中で座れるので、2kmくらい行けます。
ハンドルに「さすべえ」っていう自転車用の傘スタンドをつければ、雨でも出れます。
つまり、外出距離、頻度が向上するのです。
さらに、装具について。
こないだ、掃除のおばちゃんが、前足部の足底に創傷ができたとかで、
主治医から、前足部への荷重を避けるように言われたとかで、
踵だけつけて歩いて、仕事してたんです。
家の中で自分のことだけするならまだしも、
踵歩行で仕事は、足首を背屈させ続けるのが、マジで辛そうでした。
疲れやすいし、動き遅いし、仕事も遅れて、その分の時間が余計辛い、という悪循環。
見てらんなくて、ちゃちゃっと前足部を免荷できる踵補高装具を即席で作ってあげたら、普通に歩けるようになって、仕事のスピードも格段に上がって、喜んでくれました。
これらは、リハビリテーション(社会参加)の支援です。
そう。
社会参加のための、対象者の運動機能を踏まえた助言、動作方法の指導、補助具・福祉用具の紹介は、理学療法士の役割です。
そして、この気付きが、以前から頭をモヤモヤさせていた、あることに対する回答に結び付きました。
そのモヤモヤとは、
「ポストリハビリテーション」
今、世間でもチラチラと出てきてるみたいですが、
これは、何をやってるのかというと、(間違えてたらごめんなさい。)
公的保険による理学療法終了後の、理学療法士によるコンディショニングとか、運動プログラムみたいです。
僕、これに、なんか、違和感、というか物足りなさがあったんです。
その原因が分かったのです。
その原因とは、ポストリハビリテーション(リハビリテーションのポスト)における、理学療法士の支援の目的です。
だって、それは、健康増進だけじゃないと思うんです。
「継続的な社会参加の支援」も大事だろう!と思うんです。
もちろん、「継続的な社会参加の支援」においても、
運動機能の維持のためのコンディショニングや運動プログラムは必要でしょう。
しかし、その目的においては、それだけでなく、
いや、それ以上に、
社会参加の継続のために、対象者の運動機能(の経過)を踏まえた助言、動作方法の指導、補助具・福祉用具の紹介が、あって然るべきだと思うのです。
(というか、こういう活動をしておられる方もいらっしゃると思います。)
なぜ、ここにこだわるのか。
こだわらねばならないのか。
それは、僕が、公的保険の適応のあるべき姿について考えたいからです。
たぶん、公的保険による理学療法終了後にも、さらなる健康増進を望む、という場合は、公的保険の適応は難しいでしょう。
でも、継続的な社会参加のための支援はどうでしょうか?
社会参加の継続のために、対象者の運動機能(の経過)を踏まえた助言、動作方法の指導、補助具・福祉用具の紹介を、1,2か月に1回理学療法士が行う、というのは、公助の対象であってもいい気がします。
いやいや、そんなのどうやって分けるんだ?
と言われるかもしれませんが、そこが大事なんです。
なぜならば、それは、実施者の誠実と品格にすべてかかっているからです。
そもそも、やったら、やっただけ、お金がもらえるから、なるべくたくさんやる。
とか。そのために。
たくさんやった方が、いい結果、みたいな研究。
とかは、「金のかかる職業」というレッテルになるし、
「職業が持ってる社会保障費の枠」の使い方を「広げられなくなる」ため、
自分で自分の首を絞めることになる、ということに、そろそろ気が付いてほしいと思っています。
つまり、エビデンスは、効果を得る必要最低限の量(頻度)を示すべきです。
そして、実施者は、理学療法の目的を、対象者ごとに、誠実に仕分ける品格を備えなければいけません。
すると、例えば、将来はこんなことが可能になるかもしれません。
(私案)
・公的保険での理学療法終了後は、1,2か月に1回の、継続的な社会参加を支援する目的での理学療法士介入なら保険適応?
・評価の結果、運動機能の維持(介護予防)のために短期的・集中的な理学療法士介入が必要な場合は、介護保険の予防対象に?
・傷病の発生、増悪が疑われる場合は、医師に診察依頼し、医師の指示の下の、治療、リハビリテーションの理学療法は保険?
・医師の診断の補助や、社会参加に必要な運動機能の測定は保険適応?
・どれでもない(介護予防でないけど、頻回やる)なら自費
当然、こういった、自分たちが望む働き方や職域を守るためには、政治力と団結力が必要です。
でも、それ以上に、その働き方や職域に見合う、誠実と品格が大事なはずです。
そして、何よりも、自分たちの職域と役割、
つまり理学療法の目的である、治療、予防、リハビリテーション、検査・測定、ポストリハビリテーション(継続的な社会参加の支援)、健康増進、について、ちゃんと理解すべきと思っています。
そして、僕はどうも、世の中の「リハビリテーション」についての理解が不十分な気がしています。
そこで、リハビリテーション理念を考える会という、FBグループを作りました。
グループでは、投稿会などを通じて、リハビリテーションとは何かについて、意見交換などを行っています。
ぜひ、ご参加ください!
アライメントに依存する運動パターン
今日!
今朝、気づきました!
1月から太極拳を習っているのですが、
どうも体重移動のときの力の流れというか、
足に体重が乗せて、踏ん張るときの、タイミングが、
上手くいかない、そのズレに違和感があった、のですが、
その原因がわかりました。
日頃よりお世話になってる、とある先生に聞いたことがあるんです。
中国人は、日本人よりも骨盤が前傾している。
日本人は、中国、韓国よりも骨盤は後傾だ。と。
太極拳の写真と、日本舞踊の写真を比べると、たしかに骨盤の角度が違いますね。
それを思い出して、ほんの少し、自分の仙骨を前傾させて型をやってみると、
なんと、うまく動けました。
力の入るタイミング、体重が乗るタイミングが、しっくりきました!
なるほど、太極拳の型で動くには、日本人の仙骨はやや後傾なのかもしれません。
逆に言うと、日本人が太極拳をやるときは、
ほんの少し、仙骨を前傾させないといけないということ。
ちなみに、日本や中国といった東洋の骨盤角度であれば、上下肢の連動(力の流れ)は同側ですが、
もっと骨盤を前傾させていって、欧米やアフリカのようなアライメントになると、上下肢の連動(力の流れ)は対側になります。
このように、アライメントによって、力の流れ(姿勢緊張と運動パターン)は変わります。
つまり、対象者の、骨格、生活歴、これから(再)獲得すべき運動パターンを考慮して、
アライメント調整と、姿勢・運動コントロールを、することが大事なんですね。
さて、研修会のお知らせです。
5月12日、僕に上述の骨盤角度の重要さを教えてくれた稲村先生と研修会をやります。
テーマは、アライメント調整などのベースとなる、『関節可動域制限の治療の基礎』です。
ぜひ、ご参加ください。
身体操作の探究は『前適応』か?
お久しぶりです。
進化について学んでいる中で、ふと、自分が探究している身体操作について、これを探究する意義について思いを馳せたところ、改めて気づきを得ました。
身体操作とは、そもそもは、武術や所作における術理を成すための技能ではないかと考えています。
これは、ヒトがヒトたる形として誕生したときや、狩猟で生活していた頃には備わっててはいなかったものでしょう。
ヒト同士の闘争において効果的に優勢を得るための『武術』
生活や文化活動において、効率的、かつ美しい『所作』
文明の発展とともに、こういったものが求められ、探究され、研かれていったものと考えられます。
一方で、文明、社会の発展とともに、ヒトはそれぞれの役割を担い分け、限定的にしていったことから、活動量の低下によって、筋量が減少していったと思われます。
そして現代においては、戦争が終わり、国際文化交流に伴う、生活習慣や生活様式の変化によって、筋量が急激に減少しているのではないでしょうか。
さらに、かつては学校や家庭レベルにおいてまで教育されていた武術や所作が、家庭単位の核家族化や、教育の質と環境の変化によって忘れ去られてしまっていますね。
ここで、進化の話を紹介します。
脊椎動物の『骨』は、身体の支え、動きの起点、外界からの保護といった役割を果たしていますが、そもそもはそんなことを目的にできたものではないらしいです。
『骨』にそもそも期待されていた役割は、『ミネラル(カルシウムとリン酸)の貯蔵』と考えられており、そのために、当時の動物の身体内部(内臓と筋肉)の隙間にできたのが『骨』だそうです。
ところが、いざ骨を作ってみたところ、『速く、しかも器用に動ける』し、『身体を守る鎧としても役立つ』し、やがて陸に上がったときには『身体を重力の中で支えられる』ものだったようです。
面白いですね。
このような、最後に出来上がる形の役割と、その形を生み出した時点での機能が明確に異なっている場合、進化学では『前適応』という言葉を使うそうです。
さて、身体操作の話に戻しますと、冒頭で述べた身体操作の意義、『武術や所作における術理を成すための技能』というものも、実は、身体操作探究の『前適応』と言えるのではないかと考えます。
つまり、身体操作探究には、結果的には、まったく別の意義、役割を見つけることができると。
それは、『効率的な姿勢・運動コントロールと、そのためのボディワーク』であると、私は考えています。
筋量の減少した現代人や、運動機能障害を有する人にとって、これはかなり有意義なものと考えます。
僕は、オリジナルのボディワークで脊椎、胸郭の柔軟性を出してから、太極拳をベースにやっていますし、日々の身体操作探究から得た術理と技能は、自身の身体操作だけでなく、確実に私の患者に、姿勢・運動コントロールとしても、エクササイズとしても還元されています。
ところで、今度、久しぶりに研修会をやります。
テーマは『関節可動域制限の治療の基礎』ですので、身体操作についてはあまり触れませんが、ROM治療の実技研修会を、尊敬する稲村先生と一緒にやらせてもらえるので、とても張り切っております。
よかったら、参加してくださいね(^^)/
理学療法の「理」
お久しぶりです。
「理学療法と身体操作の気づき」というブログのタイトルにピッタリの気づきを得ました。
みなさん、理学療法の「理」ってなんだと思います?
たぶん、physicsの訳語(物理学)が本来の意味であり、物理的手段を用いた療法であることに起因することが正解だとは思うのですが、
少し違った視点で今日はお話します。
「術理」という言葉があります。
以下引用
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「術理」についてですが、
「術」とは、水泳だとか自転車に乗るとかいった様な目では見えないコツみたいなものだと私は理解しています。
次に武における「理」とは、理論つまりメカニズム・筋道・考えといったものですから
「ある考えに沿ったコツ」という意味だと思うのですよ。
そこで、東洋武術における技の考えは(心の解説は置いといて)
最小の動きで最大の力を発揮する動きを求めている。ところにあります。
それに対し西洋武術では
パワーとスピードで、物理の合理的理論・スポーツ理論から成り立っています。
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引用元
西洋武術での術理の考え方は? - 西洋の武術にも「術理」に対... - Yahoo!知恵袋
こういった視点で「理」を捉えた場合、
理学療法とは、動作能力向上のために、
・合理的に問題解決を図る(西洋的視点)
・より少ない力でも動けるように、コツを使う(東洋的視点)
という戦略を用いるものと言えます。
この東洋的視点の術理、つまり「最小の動きで最大の力を発揮する動き」に先日触れました。
それは、力の発揮という点だけでなく、身体の負担も少なくなるものでした。
純粋な幼少時代に宮本武蔵が「理」に気づくシーンがあります。
引用:バガボンド
感覚を研ぎ澄まし、剣と体の自然な動きに身を委ねる姿は、水の如く柔らかく流れます。
宮本武蔵の術理の全てを知ることなどできませんが、
先日垣間見た、武術的身体操作の術理から、
私が理学療法士として分析したポイントの一つは、
「同側の鎖骨と股関節が連動(ほぼ同期)する身体操作を動作と所作の基礎とする」
ことです。
前提として、正しい姿勢で居ることも必要ですが、
動作・所作の指導やハンドリングにおいて、そのコツを理解しておくことは、
「理」学療法士として重要なことだと思い、
また、私自身も、身体操作の練習、探究を引き続きやっていこうと決心しました。
さきほど、近くの居合剣術の道場の見学を申し込みました。
先日、触れた「術理」に共通する身体操作について指導してくれそうなところに、早く出会えますようにm(__)m
姿勢・動き方の指導については、個人ホームページのコラムをご参照ください。
適正な姿勢・動き方の探索 - masui PT のあれやこれや
研修会「運動制御システムから考える動作障害の運動療法の基礎」もご利用ください。
平成29年12月17日
内容:
・講義:運動制御のシステムと、それに基づいた動作障害の理学療法介入点の考え方を理解する。
・実技:用手接触による身体図式と坐位姿勢アライメントの修正
・実技:正しい筋力トレーニングや基本動作の動的アライメントの修正指導法
・実技:正しく、「楽な」姿勢・動き方を探究する。
新しいコラム
お久しぶりです。
お知らせです。
このブログにて理学療法に関する気づきやトピックスを発信しておりましたが、
理学療法に関する基礎知識やトピックスの発信は、
新しいコンテンツからの発信といたします。
ぜひ、のぞいてみてください。
身体操作に関する気づきがありましたら、引き続きコチラのブログから発信いたします。
今後とも、よろしくお願いいたします。
研修会の告知です。
10月22日(日)大阪会場
B:関節可動域制限と徒手技術の基礎 - 理学療法士基礎教育研修会
masui PTの治療観はコチラ