理学療法と身体操作の気づきと雑感

理学療法と身体操作について気づいたことや、ふと思ったこと、なんか言いたくなったことなどを書き留めてゆきます。個人的見解が多いので、ご了承ください。

学会発表を終えて

大阪学会で発表を終えたので、①研究内容と、②発表を終えて得た事について述べます。

「内部疾患急性期治療後の起立、歩行の安定性低下の要因となっている関節可動域とアライメントの問題」というタイトルです。

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①研究内容について

私は、今の職場に勤めて4年半になる。当初は、慢性期機能のカラーの強い病院であったが、私がリハビリテーション室を開設し、リハビリ入院を企画して以降、亜急性期機能を求めた入院患者が転院してくるようになった。

私は、当院で亜急性期患者の理学療法を担っていくうちに、急性期病院からスムースに退院できない患者のバリアンスについて、いくつかの傾向に気づいてきた。

その中で、起立、歩行能力の低下に影響する最も多い要素が、腰椎の可動性低下とアライメント異常である。

この発生要因は、先行研究からも急性期医療における「臥床期間とポジショニング」だと考えられる。が、これは急性期医療機関における理学療法で予防することが可能ではないかとも考える。

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実情として、急性期医療機関において、それに対する介入が不十分である原因については、急性期医療において発生する腰椎の問題が、その後の歩行能力の回復を阻害し、果ては退院を困難にしているという事実について知らないことが考えられる。

そこで、私は亜急性期医療機関の立場から、当院にADL向上を目的に急性期医療機関から転院してくる患者の起立、歩行能力を低下させている要因を改めて調査することにした、というのが今回の研究の実質的な背景である。

結果は、急性期治療後の歩行の安定性低下の要因となるROMとアライメントの問題には骨盤前傾・腰椎前弯可動域制限が多く、さらに腰椎後方偏位、足関節背屈可動域制限、股関節伸展可動域制限、または膝関節可動域制限も加わると起立動作も不安定になる傾向がわかった。

この研究結果は、亜急性期医療機関における治療選択だけでなく、急性期医療機関における予測的介入においても有用である点で有意義と考える。

 

③発表を終えて

発表当日は、私のお師匠さんの元上司の、私からすると大先生より質疑をいただいた。

その質疑とその後のお話の中で、『腹部の手術や急性期治療における安静臥床で生じる腰椎前弯・骨盤前傾制限と腰椎後方偏位は、その後の起立・歩行の回復の阻害になる』こと、『急性期の安静臥床時の理学療法で下肢だけ動かすのは介入として不十分である』ことについて、同意を得た。さらに、それに対する予防策について言及されたが、私は『(その)先生が提案する関節運動療法』がいいと答えた(笑)

 

関節運動療法とは、その先生が提案するコンディショニング法であり、私も大きな影響を受けている。

私は、日々の臨床実践において、関節運動療法の要素を用いたコンディショニングを行っている。

治療目標を「楽に歩ける」こととし、ROM治療から「歩きやすいコンディション」に整えることを目的としている。

私のコンディショニングにおける治療ステップは、

ⅰ)股関節運動で評価、

ⅱ)体幹のstability with mobilityの治療、

ⅲ)肢節のmobilityの治療、

ⅳ)下肢の屈曲パターンと、体幹の姿勢制御を促通、となる。

 

また、機会があれば、これについても院内などで研修を行えればと思っている。

 

本発表において、私の急性期医療で生じる問題の捉え方や、それに対する治療観について、少なくとも間違えていないことを確認できたことは、とても大きな収穫であった。

 

最後になったが、本発表の共同演者として先行研究や関連文献の検索に当たってくれたFくんをはじめ、助言をくださった診療部長、倫理審査において協力いただいたT氏に、謝意を表す。